2012年12月13日木曜日

舞鶴女子高生殺害事件 中勝美氏に逆転無罪(大阪高裁)

 2008年5月7日に発生した「舞鶴女子高生殺害事件」の控訴審判決が12月12日、大阪高裁で行われた。川合昌幸裁判長は中勝美氏(64歳)に無罪の判決を言い渡した。2011年5月18日に京都地裁(笹野明義裁判長)が下した無期懲役の有罪判決を破棄したものである。
『冤罪File』、は第13号(2011年7月号)でこの事件を詳報し、検察は被告人の有罪立証に完全に失敗した、有罪根拠は何一つ存在しないと指摘、無罪であるべきだと主張した。しかし一審は、変遷を繰り返しているばかりか、明らかに警察によってバイアスをかけられた目撃証言や、捜査当局の誘導の痕跡の明かな被告人の供述だけを根拠に、有罪としてしまった。
 控訴審判決は、これらの有罪根拠をいずれも「経験則、論理則に照らして合理的とはいいがたい」としりぞけ、無罪とした。
 これらの事実認定は、直接証拠が存在しない中で、あいまいな目撃証言や誘導された供述の問題点を指摘しており、納得のいく判決である。
 ことに、検察官による取調べの実態について突っ込んだ考察を行い、供述が誘導されうる情況であったことを指摘している点は注目に値する。これまで密室の取調室で繰り返されてきた冤罪製造(供述調書のでっち上げ)の教訓を汲み取り、捜査当局に反省を迫るものとなっている。
 また一審無罪(裁判員)--控訴審逆転有罪(小倉正三裁判長)を、最高裁が再度逆転無罪とした2月13日の画期的判決で示された、安易な有罪認定に歯止めをかける基準(経験則・論理則違反の具体的提示)を踏襲している点でも評価できる。
 だが一方、マスコミの多くが、相変わらず「無罪で悔しい」という被害者遺族の声をたんにそのまま伝達するにとどまり、冤罪を防止していこうとする流れに目を向けない報道を続けていることに失望を禁じ得ない。足利、布川、福井、東住吉、東電OLと、連続する重大事件の再審の流れを直視するなら、たんに被告人、被害者双方の声を等しく伝えました、などという従来通りの安易な報道でお茶を濁すことは出来ない筈である。
(今井恭平)

2012年11月14日水曜日

ゴビンダさん無罪確定--しかし検察からも裁判所からも謝罪なし。多く残された、重大な課題

11月7日「東電OL殺人事件」で、ゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)に無罪判決が言い渡された。検察が上告断念を明らかにしたため、無罪が確定した。
同日午前10時30分、開廷すると、東京高裁第4刑事部の小川正持裁判長は、ただちに「本件控訴を棄却する」という判決主文を読み上げた。
本ブログでは、再審第一回公判をレポートした際、以下のように指摘した。
「弁護団は意見陳述の中で、無罪判決に対する検察官控訴のあり方や、証拠隠しによる有罪という、この冤罪事件の本質を指摘し、裁判所に対しても、逆転有罪を許した過ちに判決の中で言及することを求めた。
判決は11月7日に言い渡されるが、この中で東京高裁が自らの誤審の検証に踏み込めるか否かに注目が集まる」
結論を言えば、東京高裁は、ゴビンダさんを逆転有罪にした最初の控訴審(2000年12月・高木俊夫裁判長)による誤判の内容には一言も触れなかった。そして、一審無罪判決が正しかった、と追認しただけで、検察官の控訴棄却(一審無罪判決の追認)を行った。
この裁判は、控訴審のやり直しとしての再審である以上、一審判決直後に戻って、そこから審理をやり直した、という意味では、裁判手続き上は確かに問題ないのかもしれない。
だが、再審公判で弁護団が要求していた逆転有罪の過ちにも触れず、15年もゴビンダさんの自由と尊厳を奪ってきたことへの一言の謝罪もない判決に、傍聴席からは「それ以外に言うことがあるだろう」「謝罪せよ」などの声が飛んだ。
無実のゴビンダさんを支える会と日本国民救援会が、判決直後に開いた報告集会で発言した布川事件の桜井昌司さんは「裁判官である前に、人間であるべきだ。そういう心がないから裁判官は過ちを犯すのだ」と指摘した。
支える会と救援会は、11月12日、最高裁と最高検に申し入れに行き、誤判の徹底した糾明と司法改革に取り組むこと、その前提としてゴビンダさんに謝罪することを要求した。ことに、高裁の逆転有罪を追認して有罪を確定させ、また無罪判決を受けたゴビンダさんを職権で再勾留した最高裁が口を拭っていることは、とうてい許されるものではない。
マスコミ報道でも、多くが裁判所からの謝罪がなかったことについて言及していた。
(今井恭平)

2012年10月31日水曜日

ゴビンダさん再審、1回で結審--裁判所は自らの過ちを検証できるか?

ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの再審公判は、10月29日午前10時半に開廷し、わずか25分の審理をへて1回で結審した。
検察は被害者の手指の爪から「376の男」のDNAが検出されたという鑑定書を証拠申請し、自ら無罪を主張した。
弁護側は、被害者の衣服や身体、事件現場から同じく「376の男」のDNAが検出された証拠や、被害者の身体にO型唾液が付着していたことなどを証拠提出し、やはり無罪を主張した。
双方が無罪を主張する中で、審理は1回で結審した。
審理終結にあたって、裁判長は弁護、検察双方に意見を求めたが、検察はつい10日ほど前までの有罪主張を無罪に変えるという大転換をしながら、何一つ意見表明も行わなかった。
弁護側は、検察は一審無罪判決に対して控訴したこと自体が誤りであったことを認め、控訴を自ら取り下げるべきだと主張したが、これにも検察は答えなかった。
ゴビンダさんは再審公判を前に、検察に対して謝罪を求めることを表明していた。だが、東京高検は「謝罪も事件の検証も必要ない」という態度を変えなかった。
しかし、公判の終結直後に青沼孝之次席検事が「結果として長期間拘束したことは申し訳なかった」と形だけの談話を発表した。
弁護団は意見陳述の中で、無罪判決に対する検察官控訴のあり方や、証拠隠しによる有罪という、この冤罪事件の本質を指摘し、裁判所に対しても、逆転有罪を許した過ちに判決の中で言及することを求めた。
判決は11月7日に言い渡されるが、この中で東京高裁が自らの誤審の検証に踏み込めるか否かに注目が集まる。
<文責 今井恭平>

2012年10月5日金曜日

布川事件の桜井さんがいよいよ11月12日に国賠訴訟を提起 支援する会も船出


昨年、晴れて再審無罪判決を勝ち取った布川事件の桜井昌司さんが国と県を相手取って起こす国家賠償請求訴訟を支援する会(名称は『冤罪・布川事件の国家賠償請求訴訟を支援する会』)が結成され、その結成総会が1日、東京都文京区の「文京区民センター」で開かれた。会には、全国各地から60人以上が参加。足利事件の菅家利和さんや氷見事件の柳原浩さんら著名冤罪被害者も激励に訪れ、盛況な船出となった。

 会はまず、かねてより国賠訴訟を提起することを表明していた桜井さんの挨拶で始まった。桜井さんは、「冤罪が次々明らかになるようになった今も警察や検察、裁判所は何も変わっていない。冤罪が作られる原因を取り除くには、国賠しかないと思った」と国や県を相手に訴訟を起こす意図を説明。「3年以内に勝つことを目標に全力で突っ走る。今も自分たちを犯人だと言い続ける検察に『申し訳なかった』と言わせたい」と決意表明した。

 その後にあった谷萩陽一弁護団長の説明では、この国賠訴訟の意義は、(1)桜井さんの救済、(2)冤罪を生んだ公務員一人ひとりの責任を明らかにすること、(3)冤罪を二度と生まない刑事司法の改革に結びつけること――の3点。検察による数多くの証拠隠しが指摘されてきたこの事件では、再審でも隠されたままだった無罪証拠が多数ある見込みのようで、それらが国賠訴訟の中でどれだけ明らかになるかが勝負の大きなポイントになりそうだ。

 弁護団は11月12日の13時に東京地裁に訴状を提出予定。支援する会も当日は東京地裁に駆けつけて宣伝活動を行う予定だ。

片岡健


 挨拶する桜井さん。左は、支援する会の中澤宏事務局長



国賠の意義などを説明する谷萩弁護団長



満員となった会場



応援に駆けつけた管家さん



応援に駆けつけた柳原さん



司会を務めた「無実のゴビンダさんを支える会」の客野美喜子事務局長

2012年9月20日木曜日

冤罪布川事件・国家賠償請求訴訟を支援する会 「結成総会」参加の呼びかけ


布川事件の桜井さん・杉山さんは2011年5月24日無罪判決を得て、守る会も2012年5月26日、目的を達成して解散しました。しかしこの無罪判決は誤判の原因と責任を明らかにしておらず、検察・警察は未だに二人を犯人と強弁する姿勢を崩していません。
 桜井さんは、検察・警察・裁判所の責任を追及し、冤罪をなくすため全証拠の開示・取調べの全面可視化の制度を実現することを目指して、国家賠償請求訴訟をおこすことを決意しました。
 私達有志は、桜井さんのこの決意に応えて、布川事件の国賠請求訴訟を支援する会を立ち上げることにしました。是非ご参加・ご入会ください。

 と き 10月1日午後6時30分
 ところ 文京区民センター3-C   
 ・都営地下鉄三田線・大江戸線 春日駅 徒歩1分
 ・営団地下鉄丸の内線 後楽園駅 徒歩3分
 ・JR 水道橋駅 徒歩7分    03(3814)6731


 布川国賠を支援する会準備会

2012年6月27日水曜日

延々と続く大分清川女性殺害事件控訴審 一年を経ても結審の見通しすら立たず


本誌15号で取り上げた大分清川女性殺害事件の控訴審が7月で初公判から一年を迎える。

  大分地裁(宮本孝文裁判長)の第一審では2010年2月、強盗殺人罪や住居侵入罪で起訴された男性・伊東順一さんが完全無罪判決(求刑は無期懲役)を言い渡されたが、大分地検が控訴。昨年7月から始まった福岡高裁(服部悟裁判長)の控訴審では、検察側が延々と証人を請求し続け、裁判官がそれをことごとく採用するため、審理が長期化している。現時点で年内にあと3回の公判が開かれる予定だが、一年以上の審理を経ても結審の見通しすら立たない状況だ。
弁護側によれば、今月19日の第16回公判までに法廷で取り調べられた証人は30人を突破。弁護人の一人は「裁判官は今のところ、検察官が控訴審になって請求した証人をすべて採用している。この感じだと、最終的に50人以上の証人を調べるのではないかと思うが、一体いつまで続くのか・・・・・・」と疲れをにじませた。伊東さん本人は現在、公判に出廷していないが、第一審では計32回の審理を経て無罪判決を勝ち取ったにも関わらず、その後も延々と被告人という立場に置かれ続けている状況に当然のごとく怒っているという。
本誌で詳報した通り、有罪証拠は事実上、捜査段階の自白しか存在しなかった上、その自白も様々な点で疑わしく、第一審の無罪判決はきわめて妥当だったこの事件。検察側は控訴したものの、控訴審でもめぼしい物証は何も提示できず、次々に出廷する検察側証人からも有罪を裏付ける証言は何も出てこない。被告人側が一審判決を不服として控訴した場合、控訴審は1、2回の審理ですみやかに終結して控訴棄却されるのが通常なのに、検察側が無罪判決を不服として控訴した場合、なぜこんなことになるのか・・・・・・あまりにもアンフェアな裁判がいま、福岡高裁で延々と続いている。
                                      
                                          <文責・片岡健

                                                              
【大分清川女性殺害事件】
2005年3月、大分県の大野郡清川村(現在は豊後大野市清川町)で一人暮らしをしていた女性・山口範子さんが自宅敷地内で何者かに頭部を執拗に殴打されて殺害され、遺体で発見される。約2年後、山口さんの知人である伊東さんが強盗殺人などの容疑で逮捕・起訴され、いったんは自白に追い込まれたが、公判では否認。第一審・大分地裁の宮本裁判長は、自白の信用性を否定し、伊東さんに無罪判決を言い渡すと共に取り調べの一部について、「令状主義を潜脱する違法なものであった可能性を否定できない」と批判していた。

2012年6月7日木曜日

東電OL殺人事件 再審開始決定と刑の執行停止決定!

本日午前10時、東京高裁は東電OL殺人事件で無期懲役が確定したゴビンダ・プラサド・マイナリ氏の再審開始を決定すると同時に、刑の執行停止を決定した。争点となったDNA鑑定について決定では、「(弁護側の新たなDNA鑑定結果が)公判で証拠提出されていれば有罪認定できなかったと思われ、無罪を言い渡すべき明らかな新証拠。受刑者以外の男が被害女性と性的関係を持った後に殺害した疑いを生じさせている」として、弁護側の主張に沿った判断を下した。
「無実のゴビンダさんを支える会」では、当初高裁に対して刑の執行停止を申し入れる予定だったが、図らずも刑の執行停止決定が出たことでゴビンダ氏本人はもとより、妻ラダさん、娘ミティラさんやエリサさんらご家族、関係者の喜びもひとしおであった。
検察は決定を受けてすぐに異議申し立てを行ったが、ゴビンダ氏は決定通り横浜刑務所から即日釈放された。現在東京入国管理局横浜支局に滞在。所定の手続きを経て、近日中に家族とともに帰国の途につく可能性が高くなった。



2012年5月25日金曜日

再審請求退ける不当決定  「名張毒ぶどう酒事件」


本日、午前10時、名古屋高等裁判所(下山保男裁判長)は、名張毒ぶどう酒事件(1961年)の無実の死刑囚、奥西勝さん(86歳)の再審請求を、再び棄却する不当決定を行った。

奥西さんは、05年名古屋高裁で再審開始決定を勝ち取ったが、検察の異議申し立てにより、06年同じ名古屋高裁(門野博裁判長)で決定を取り消され、最高裁に特別抗告。最高裁は、犯行に使われた毒物が奥西さんの所有していたニッカリンTと同一であるか否かの科学鑑定について、審理が尽くされていないとして名古屋高裁に差し戻していた。
今回の棄却決定は、毒物には、ニッカリンTとは異なる物質が含まれてはいるが、経年変化などで生じた可能性もあるとして、ニッカリンTではないとは言い切れないと認定した。「疑わしきは被告人の利益に」の大原則を裁判所自らが投げ捨てた認定と言わざるを得ない。
さらに捜査段階の「自白」は「根幹部分で信用できる」と述べ、数々の無罪証拠を無視した上で、虚偽自白に依拠した決定を行った。

86歳と高齢で、体調もすぐれない奥西さんが待ち望んでいた吉報はまたしても裏切られ、さらに再審開始が先延ばしとなった。決定後、奥西さんに面会した弁護団によれば、奥西さんは「ありがとう」とまず弁護団の労をねぎらい、「今回は残念だったが、次の勝利を信じているので、一層の支援をお願いします」と話したという。
鈴木泉弁護団長は、ただちに特別抗告の準備に取りかかる、と言明した。

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ニッカリンTが犯行に使用されたか否かの論点について、検察側主張が破綻していることは、本誌13号「名古屋高裁よ、三度目の過ちは許されない!」で詳しく紹介している。


2012年5月23日水曜日

最新号


来週の月曜、5月28日に
冤罪File No.16
全国発売です。





2012年5月14日月曜日

名張毒ぶどう酒事件 いよいよ再審開始決定へ!!


名張毒ぶどう酒事件(詳細は本誌2009年6月号)の異議審差し戻し審の決定期日が、5月25日(金)午前10時と明らかになった。

1961年の事件発生からは、すでに51年を経過した冤罪事件で、一審無罪(津地裁)だった奥西勝さんは、二審で逆転有罪・死刑判決(名古屋高裁)を受け、その後刑が確定。死刑囚として無実と再審を訴え続けている。
2005年、第7次再審請求が認められ、再審開始が決定された。しかし、検察が異議を申し立て、2006年、名古屋高裁がこれを認めて再審開始決定を取り消した。(門野博裁判長)
奥西さんは特別抗告を申し立て、これを受けた最高裁は2010年、原決定を取り消して名古屋高裁に再び差し戻し、これまで同高裁刑事2部で審理が行われてきた。

こんどこそ、86歳の無実の死刑囚、奥西勝さんの再審開始が決定され、すみやかに無罪判決が勝ち取られなければならない。

2012年4月17日火曜日

「ショージとタカオ」1周年記念&上映のお知らせ


昨年5月24日に布川事件の再審判決が出されてから1年がたつ5月に、再審無罪1周年記念として東京渋谷で映画「ショージとタカオ」が再上映されます。


●1周年記念アンコール上映

5月19日(土)~5月25日(金)毎日18時~
オーディトリウム渋谷 渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F
http://a-shibuya.jp
公式サイト http://shojitakao.com/
※初日上映後に桜井昌司さん、杉山卓男さん、井手監督の挨拶 
他日もゲスト有り
特別鑑賞券1000円発売中
(当日一般1500円/大学・専門学校生1200円/シニア1000円/高校生800円/中学生以下500円)

〈上映委員会連絡先〉
tel:03-6273-2324 fax:03-3226-0826
email:shojitakao@gmail.com


ストーリー

冤罪を晴らすのは容易ではない。 1967年に茨城県で発生した強盗殺人事件<布川事件>の犯人とされ、無期懲役囚として29年もの獄中生活を送ったショージとタカオ。「犯人ではない」と獄中から裁判のやり直しを求め続けてきた 2人と2人を支える人々。監督の井手洋子が、2人の仮釈放からの14年間を記録した。 希望を失うことなく、飄々と日々を生きていくショージとタカオ。 2011年の5月、再審判決で無罪になった2人のたくましい生き方から、明日を生きる勇気が得られるかもしれない。

84回キネマ旬報ベストテン文化映画部門1位/66回毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞/2011年文化庁文化記録映画大賞/2011年日本映画批 評家大賞ドキュメンタリー作品賞/2011年釜山国際映画祭アジア部門最優秀ドキュメンタリー賞/2011年ドバイ国際映画祭 ベストヒューマンライツ映画賞


2012年3月27日火曜日

4月8日(日)「無実のゴビンダさん支援集会」のお知らせ


本誌でもたびたび報道してきた「東電OL殺人事件」のゴビンダ・プラサド・マイナリ氏の再審請求は、いよいよ大詰めを迎えている。
昨年7月以降、検察が隠していた無罪証拠(DNA鑑定等)が次々に明らかになり、事件現場で、ゴビンダ氏ではない何者かが被害者と会っていたことが、動かせない事実として証明されている。
無実のゴビンダさんを支える会は、「もはや、一刻の猶予もなく、再審開始を決定し、ゴビンダさんを釈放すべき時にいたっている」として、以下のように支援集会を開催する。

最終局面を迎えた再審請求の現状について弁護団からの報告を聞くことができ、また同様に再審開始に向けて決定的局面を迎えている袴田事件についても、弁護団からの報告を聞くことができる。

4月8日(日)
午後1時半開場 2時開始~5時終了(予定)
於:JAM金属労働会館(301/302)(渋谷)
参加費:500円
会場地図
http://phonebook.excite.co.jp/M13007/13113/0334637394-001/

プログラム
弁護団報告/新証拠と再審 ゴビンダ弁護団
ゲスト講演/袴田事件と再審 小川秀世弁護士
ゴビンダさん・家族からのメッセージ その他
報告/日本国民救援会の取り組み 救援会中央本部
報告/「支える会」の活動と今後の方針 支える会事務局

主催:無実のゴビンダさんを支える会
http://www.jca.apc.org/govinda/

2012年3月15日木曜日

検察独自鑑定でも、ゴビンダ氏のDNA特定されず


1997年、渋谷区円山町で東京電力の女性社員(当時39歳)が殺害された、いわゆる「東電OL殺人事件」は、無期懲役刑に服しながら再審の申し立てをしているネパール人、ゴビンダ・プラサド・マイナリ氏(45歳)の無実を証明する新事実が次々に明らかになっている。(本ブログ関連記事参照)
事件発生から14年目にして、昨年ようやく検察が開示した新証拠・計84点のDNA鑑定が進む中で、ゴビンダ氏ではない第三の人物XのDNAが、(1)被害者の膣内の精液(2)遺体の側に落ちていた陰毛(3)遺体の体表に付着した唾液(4)被害者のコートの左肩に付着した血痕などから検出され、このXが被害者と最後に事件現場で接触した人物であることが疑いようがなくなっている。

再審請求を審理している東京高裁第4刑事部は、これまでに職権で行った57点の鑑定結果だけで十分と判断し、残り27点は関連性や重要性がより小さいとして、鑑定は行わないことを決定している。しかし検察は、最後に残ったこの27点についても、独自に鑑定を行った。その鑑定結果が3月12日夕刻、弁護団に開示された。
それを受けて、弁護団が13日午後、記者会見を行った。冒頭、石田省三郎(いしだしょうざぶろう)弁護士は、「本日の新聞に相反する内容の記事が出ているため、客観的事実を明らかにするためにこの会見を開いた」と説明。27点の資料(被害者の手や衣服に付着した微物)から「(ゴビンダ氏と)一致するとみられるDNA型が検出された」(共同通信)「ゴビンダ氏や、第三者のものと特定できるDNA型は、いずれも検出されなかった」(時事通信)と、報道内容が錯綜していること対して、正確を期すための会見であることを説明した。
神山啓史(かみやまひろし)弁護士は「一部の資料について、請求人(ゴビンダ氏)のDNA型が一部のローカス(DNAの特定の部位)に混在して検出されている」という事実があるだけである、と説明した。
DNAによって個人識別を行う場合、現在はSTRという検査方法が標準的に行われている。これは、DNAの特定の部位で、塩基配列の繰り返し回数を調べ、それを型として同一人物か他人かを識別するものである。1箇所(1ローカス)だけでは、型のバリエーションは多くなく、他人でも同じ型が出ることも珍しくない。したがって現在は16箇所(15箇所の常染色体及び性染色体)を調べて識別力を幾何級数的に高めることで、正確な異同識別が可能になっている。
今回の検察独自鑑定では、一部のローカスにゴビンダ氏にも存在する型があった、というにすぎない。この型がゴビンダ氏に由来するか明らかではなく、被害者の手や衣服にゴビンダ氏が触れたことがある、という事実とは全くかけ離れている。
現段階では正式な鑑定書も出来上がっておらず、これらのDNA断片資料から有意な結論を引き出すことは不可能であり、弁護団は「検査データを鑑定人がどのように評価するかを待ちたい」と述べて会見を終了した。しかし、異同識別という意味では鑑定不能という結果になる可能性が高いものと考えられ、検察独自鑑定によっても、ゴビンダ氏に由来すると特定できるDNA型は検出されなかった、と結論づけるしかない。
少なくとも「再審請求受刑者とDNA一致」(デイリースポーツ・オンライン)など一部の報道に見られたセンセーショナルな文言には、何の根拠もないことが明らかになった。ネット版では共同通信の配信記事を掲載した東京新聞が、13日夕刊では「受刑者の型、検出せず」と報じるなど、報道にも軌道修正が見られている。
再審について裁判所、弁護団、検察が行っている三者協議は、3月19日に次回が予定されており、この日に審理を終結させ、東京高裁が再審開始か否かを決定するプロセスに進むものと考えられる。

<文責・今井恭平>

2012年3月8日木曜日

「東住吉冤罪事件」で再審開始決定


 95年、大阪東住吉区の民家で火事があり、小学6年生の女の子が焼死した。母親と内縁の夫だった男性が殺人と放火の罪で無期懲役を言い渡され、現在服役中だが、大阪地裁は7日、二人の請求に対し、再審を開始する決定をした。

 再審請求の申し立てをしていたのは、青木惠子さん(48歳)と内縁の夫だった朴龍皓さん(46歳)。二人は、青木さんの長女、めぐみさん(当時11歳)に掛けていた保険金を目当てに自宅の車庫にガソリンを撒いて放火し、入浴中のめぐみさんを殺害したとして無期懲役の判決を受けていた。物証はなく、「7リットルのガソリンを床にまいて火をつけた」などとする朴さんの自白が有罪の決め手になっていた。

 今日の決定で裁判所は、弁護団の行った実験によって「自白通りの方法では朴さんがやけどを負うこともなく外に出ることは不可能である」とした。そして二人の自白は「不自然な点を多く含み、信用できない」として、再審開始を決定した。



2012年2月23日木曜日

ホームページ再開


メンテナンスにお時間をいただき、
お待たせして申し訳ありませんでした。


下記のマイナーチェンジを行いました。

 *HPトップページにフォトフラッシュ機能を追加しました。
 *事件別ブログを編集局公式ブログに統合しました。
 *ご意見・お問い合わせ機能を追加しました。


どうぞよろしくお願いいたします。

2012年2月12日日曜日

えん罪・神戸質店事件支援する会が結成

2005年10月、神戸市で起きた質店主殺害事件で、冤罪を訴えながら無期刑が確定したOさんの無実の声に応え、2月11日、神戸市内で支援する会の結成総会が開かれた。


事件から1年10ヶ月後に逮捕されたOさんは、一貫して無実を訴え、2008年6月、一審神戸地裁で無罪判決を受けた。だが検察が控訴し、2009年9月、逆転有罪で無期刑となり、昨2011年12月、上告が棄却されて刑が確定した。
事件現場に、Oさんの指紋や煙草の吸い殻(Oさんと唾液のDNAが一致)が残されていたことが有罪の根拠とされた。しかし、Oさんは電気工事の下見で現場に立ち入ったことがあり、指紋等が残っていたことには納得のいく理由がある。だが、不確実きわまりない目撃証言もあわせて、大阪高裁(小倉正三裁判長)が有罪とした。
上告審は2年もかかって、「上告理由にあたらない」との門前払い判決で刑を確定させた。Oさんは本年1月から確定受刑者となり、刑務所に移送されたが、必ず再審で無罪を勝ち取る、と支援者らに語っている。
2月11日、市内で集会をもった家族・友人・支援者が「えん罪・神戸質店事件支援する会」を結成し、今後再審・無罪に向けた活動をしていくことが確認された。
集会には、昨年5月、再審無罪を勝ち取ったばかりの布川事件の桜井昌司さんも駆けつけ「こんなでたらめな判決がまかり通る筈はない。必ず再審で無罪が勝ち取れる」とエールを送った。



本事件については、弊誌第8号で詳細に報じているので参照いただきたい。
<文責・写真/今井恭平>

2012年2月11日土曜日

北陵クリニック事件 守大助さんが再審請求

2001年に仙台市の北陵クリニック(すでに閉鎖)で起きたいわゆる筋弛緩剤事件で無実を訴えながら千葉刑務所に無期刑で服役中の守大助さん(40)が、2月10日午後2時、仙台地方裁判所に再審請求の申し立てを行った。その後記者会見した弁護団によれば

  1. 有罪の根拠となった大阪府警科捜研の鑑定を真っ向から否定する新たな鑑定(東京薬科大学・志田保夫元教授)によって、患者さんから筋弛緩剤は検出されていないことが証明された。
  2. 患者さんの急変は、筋弛緩剤によるものではありえず、他の病因によるものとして完全に説明可能(長崎大学・池田正行教授による鑑定意見書)
  3. 守大助さんのいわゆる「自白」なるものや公判での供述は、無実の人の供述として自然であり、真犯人の供述としては不自然、という心理学的供述分析鑑定(奈良女子大学・浜田寿美男名誉教授)

という3つの科学鑑定を中心として、事件の核心に迫り、原判決を覆すまったく新たな証拠を得た、と再審への自信を示した。
再審請求提出後に行われた支援者の集会で、阿部泰雄弁護団長は、「原審ではいっさいの科学的鑑定等が否定された。裁判所が新証拠の科学鑑定をしっかり理解し、正しい判断をしてくれるよう、働きかけていく」と話し、また検察の未開示証拠の開示や三者協議の実施を強力に働きかけていく、と語った。



北陵クリニック筋弛緩剤事件については、弊誌第2号に詳細な記事があるので、参照して下さい。
<文責・写真/今井恭平>

2012年2月5日日曜日

北陵クリニック事件再審申し立てと支援行動


2月10日(金)再審請求の申し立てを行うにあたって、弁護団と支援団体は以下のような行動予定をたてている。

12時~13時 
仙台市一番町フォーラス前にて宣伝

13時50分より
仙台地方裁判所にて弁護団を激励

14時
弁護団、再審請求申立書提出
ただちに支援者に報告

14時30分頃
ホテル・ベルニア仙台にて弁護団記者会見

15時頃より

仙台市戦災復興記念館地下展示ホールにて報告集会
(弁護団、両親、県内外からの支援者が参加します)

2012年2月4日土曜日

2月2日、証拠開示命令を申立て

昨2月2日、三鷹事件再審弁護団は、東京高裁第4刑事部に対し、証拠開示命令申立書を提出しました。


開示命令を求めたのは、竹内景助さんや目撃者らの供述調書など21項目にわたります。
同日、三鷹事件再審を支援する会は1月19日に開催した「三鷹事件の再審開始を求める集い」で採択、署名いただいた「要請書―冤罪・三鷹事件について、未提出証拠を直ちに開示し、再審開始を速やかに決定してください」を提出しました。支援する会からは5名の代表が参加し、署名された要請書の束を渡しました。東京高裁の担当官は、私たちの要請に丁寧に対応され「確かにお預かりしました」と要請書を受け取りました。
その後、司法記者クラブで弁護団と支援する会が記者会見、翌3日に新聞報道がありました。
多くの新聞社・テレビ局が参加しており、関心の高さを感じました。
弁護団は裁判官との面会を求めましたが、書面提出後に検討するとの話があった旨の報告が弁護団からありました。時期は明らかにされませんでしたが、この裁判官との面会が次のステップになると思われます。

情報ソース:竹内景助さんは無実だ!三鷹事件再審を支援する会

2012年2月2日木曜日

ビデオ 10年目の現場検証

動画コーナーに「東電OL殺人事件 10年目の現場検証」をアップしました。

無実のゴビンダさんを支える会は、事件現場のアパートを1年間借りて現場検証を何度も行いました。このビデオは、そこから浮かび上がってきた事件の核心的な謎を究明しています。
事件現場をただの1度も見たこともなく逆転有罪とした確定審(東京高裁 高木俊夫裁判長)の事実認定がいかに机上の空論であるか、現場を見れば誰でも感じるおかしさから説き起こしています。

2012年2月1日水曜日

記者会見予定

三鷹事件弁護団は、2月2日午後1時半より司法記者クラブで記者会見を行います。

2012年1月27日金曜日

冤罪File-No.15



最新号がいよいよ明日、1月28日(土)発売です!





追加DNA鑑定はしない意向(東京高裁)


再審の是非の判断に移行

東京高裁は、これ以上の追加鑑定は行わないという意向を、弁護団、検察双方に伝えた。これにより、証拠調べを打ち切り、再審の可否を判断するものと見られる。

本ブログ既報の通り、昨年9月に開示された42点の新証拠(つまりこれまで検察が隠していた証拠)のうち15点の鑑定が今月までに終わっており、検察は正式鑑定書が出来上がるのを待って3月16日までに意見書を提出するとしている。
その後、残り27点の追加鑑定を行うか否か(弁護団は必要なしとしている)が当面の焦点だった。
讀賣新聞1月25日朝刊によれば、高裁はこの追加鑑定を行わない意向を、弁護団、検察双方に伝えたとされる。。
したがっていずれにしても3月19日の次回三者協議をもって証拠調べを打ち切り、再審を開始するか否かを決定する最終プロセスに入る可能性が強まった。

<文責・今井恭平>

三鷹事件の再審開始を求める集い

さる1月19日、「三鷹事件の再審開始を求める集い」が事件現場に近い武蔵野市吉祥寺の武蔵野公会堂で開かれ、約300名が参加した。

この日は、1967年の前日(1月18日)に竹内景助氏が無念の獄死をしてから45年目にあたる。
集会では高見澤昭治弁護団長が挨拶。また、再審請求の新証拠として
竹内氏の単独犯行が技術的に不可能であることを証明する専門家証言
アリバイの存在
目撃証言が警察に誘導されたものであること
などを明らかにしていく、と報告された。
また、この間、布川事件、狭山事件、袴田事件やゴビンダさん冤罪事件(東電OL事件)などの重要再審事件で、検察の隠していた証拠が開示されたことで大きな進展が得られていることを指摘。三鷹事件再審でも、検察の持っている証拠を積極的に開示させることを求めていく、と方針が示された。
弁護団の報告の後、映像作家の森達也氏(下山事件に取材した著書がある)が講演を行った。

<文責・今井恭平>

2012年1月26日木曜日

三鷹事件第2次再審請求


竹内氏獄死から44年

昨年(2011)11月10日、三鷹事件で唯一有罪(死刑)となった竹内景助氏の遺族が、再審請求を行い、東京高裁が受理した(担当は第4刑事部)。事件発生(1949年7月15日)から実に62年ぶりのことである。
10人の被告人の中で、なぜ竹内氏だけが有罪となったのか?米国による占領下の日本でおきた3大国鉄事件(他に、下山事件、松川事件)の中で、唯一死刑確定者を出した事件の真相はなんだったのか?
一旦は自白に追い込まれながら、無実を訴えて1931年に再審請求を起こした、竹内氏は、1967年に無念の獄死をした。今回の第2次請求は、その遺志をついで、44年ぶりにおこされたものとなる。

本誌最新号(15号)では、事件と再審請求について、詳細な記事を掲載したので、ぜひお読み頂きたい。

無実をだめ押しする追加DNA鑑定


袴田さん自身のDNAを鑑定


1月23日、静岡地裁で、袴田事件再審請求の三者協議(裁判所・弁護団・検察による非公開の協議)が行われた。この場で弁護団は、新たに追加鑑定として、袴田さんご本人のDNAを採取し、「5点の衣類」に付着しているB型(袴田さんもB型)血痕のDNAと比較することを申請。裁判所がこの鑑定を行うことを決定した。
先に明らかになった5点の衣類のねつ造だけでも再審開始決定には十分すぎる新証拠と言えるが、弁護団としてはだめ押しの追加鑑定によって、再審開始決定の内容をさらに確固としたものにするねらいがあると思われる。
今年3月10日で、袴田さんは76歳の誕生日を迎える。ご高齢の上に、心身ともに健康を著しくそこねておられる。鑑定も再審開始決定も、時間を一刻も無駄にせず、すみやかにすすめられなければならない。

<文責・今井恭平>

「5点の衣類」は、やはり警察によるねつ造だった!


袴田さんの無実を証明したDNA鑑定

発生(1966年6月30日)から半世紀近くを経過した袴田事件が、2011年12月22日をもって急展開する--本誌は14号でこう伝えた。犯行時に袴田氏が着用し、被害者の返り血を浴びたとされてきた「5点の衣類」のDNA鑑定が行われ、その結果がこの日に公表されるからである。
そして明らかになった鑑定結果は「5点の衣類は警察によるねつ造である」という弁護側主張を100%証明するものだった。
だが、新聞もテレビも、何故かこの重大な事実を正面から伝えようとしない。28日に発売となった本誌15号では、袴田さんの無実を証明したDNA鑑定の内容を徹底的に分析している。
是非、本誌を読み、袴田さんの無実はもはや、火を見るよりも明らかだという真実を知って頂きたい。

「5点の衣類」とは、袴田氏が犯行のときに着ていた衣服だとされ、それに付着している3種類の血液は、被害者の返り血と、袴田さん本人が犯行時に負傷した際の血痕だとされてきた。袴田事件最大の物証である。
だが、弁護団推薦鑑定人の鑑定結果によれば、5点の衣類からは、被害者とは異なる4名以上の血縁関係のない人たちのDNAが検出できた。これ以上に決定的なねつ造の証明はない。長年の論争に最終的に決着がついたのだ。
そもそもこの衣類は、事件から1年2ヶ月も経過してから、徹底的に現場検証されていた味噌工場のタンクの中から発見されたという経緯自体が、大きな疑惑を呼ぶものだった。
一方、検察推薦の鑑定人は、鑑定に失敗してしまった。そして、かわりにミトコンドリアDNA鑑定という、より識別力の弱い方法のみを行い(それも実は不完全なもの)その一部分から混合DNAが検出された。それをとらえて、検察は袴田氏の血痕が付着している可能性も排除できないなどと主張する。そして、その尻馬に乗った一部マスコミが、(弁護側、検察側)両鑑定結果が分かれた、などと書いている。だが、5点の衣類から被害者のDNAが全く検出されず、他人の血痕であったことが判明したという動かせない事実の重みが何を意味するのか、報じていないのはどういう訳なのか?この事件の争点自体をまったく理解していないとしか考えられない。

本誌15号の記事では、検察推薦鑑定人の鑑定がいかに鑑定の名にも値しないお粗末なものであるか、無責任で不誠実なものであるのか、専門家による検証も踏まえて詳述した。
DNA鑑定という一見素人には難しくて理解できそうにない、と思えるものも、けっして目をそらすことなく自分自身で理解しなくては、嘘だらけの検察のデマゴギーに惑わされるばかりだ。

<文責・今井恭平>

寒中お見舞い申し上げます



ホームページのリニューアルにともない、
今後は旬の話題をリアルタイムでお伝えできる機会も増えることと存じます。
これからも「冤罪File」をどうぞよろしくお願いいたします。

さて、まずは嬉しいニュースです。

「冤罪File」第12号でもご紹介しました
冤罪「布川事件」のドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」が、
第66回毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞を受賞しました!

昨年末にはドバイ国際映画祭において
ヒューマン・ライツ・フィルム・ネットワーク賞を受賞するなど、
国内外で高い評価を受けています。

ぜひ多くの方々にご鑑賞いただきたい作品。

トップぺージの動画コーナーにて予告編がご覧になれます。

今後各地での上映予定など詳細は下記URLから・・・。
http://shojitakao.com/




2012年1月25日水曜日

1月24日 三者協議


またしても検察の引き延ばし策

1月24日午後5時より、東京高裁でゴビンダさん再審請求審の三者協議(高裁第4刑事部、東京高検、弁護団による非公開の協議)が開かれた。だが30分後には弁護団が記者会見場に姿を見せ、三者協議はわずかの時間で終了したことが分かった。


弁護団によれば、検察は昨年9月から開始した15点の追加DNA鑑定の正式の鑑定書が出来上がるのが2月末となるため、それが出来たあとで意見書を作成する、それには3月16日までかかると主張したという。そこで、裁判所はそれを待って3月19日に次回の三者協議を開くことを決め、それだけで24日の協議は実質的に何の進展もなく終了したようである。
正式の鑑定書が出来上がっていないとはいえ、すでに各資料の鑑定結果はその都度あきらかにされており、弁護団は即座に再審請求補充書を何通も作成し、意見を表明している。もはやこれ以上の事実審理の必要はなく、ただちに再審開始を決定すべき時期にきているのは明白だ。検察はまたしても鑑定書が完成していないことを理由に時間の徒な引き延ばしを謀っていると指弾されても仕方ない。
さらに残り27点の追加鑑定などを主張する可能性もある、と報じられているが、到底許されることではない。
支援団体の無実のゴビンダさんを支える会には、ネパールのご家族からこの日もすぐに電話があり、協議の結果を期待と不安を胸に待っていたことが伺われる。
次々と無罪証拠が明らかになっているにもかかわらず、再審がなかなか決定されないことは、ご家族には理解不能なことだろう。われわれ一般市民の感覚からしても、理解に苦しむことである。

文責・今井恭平

真犯人Xの浮上

検察が14年間隠していた証拠から、真犯人像が浮かび上がった!

昨年7月23日付けの鈴木鑑定によって、従来は存在が知られていなかった人物Xの存在が浮上。この男性は被害者の体内に自分の精液を、そして事件現場のK荘101号室に体毛を残していた。
しかも昨年9月2日、検察(東京高検)は、これまで隠していた証拠がさらにあったことを明かした。ことに重要なのは、それらの中に、被害者の身体の表面(胸や口周辺など)に唾液が付着しており、その血液型がO型だという鑑定書が含まれていたことだ。(ゴビンダさんはB型だから、DNA鑑定をする以前の問題として、これは別人のものだ)その上、そのことは事件直後の1997年4月3日には判明していたことが分かった。(O型唾液が付着していた、という鑑定書の日付が同日)つまり、別人の唾液が被害者の身体に付着していた、という重要な無罪方向の証拠を隠した上で、逮捕、起訴していたということなのだ。これは、無実の人を意図的に有罪にしようとした意図的な犯罪行為としか言いようがないものだ。

さらに、11月1日には、このO型唾液のDNA型も、Xと一致したことが判明。Xが真犯人である蓋然性はさらに高まった。
支援団体「無実のゴビンダさんを支える会」や国民救援会等が主張している通り、もはや再審を開始する要件は完全に整っている。そして、無実の人が無期刑に服しているという異常な事態が継続していることが明らかであり、東京高裁はただちに事実審理を打ち切って再審開始決定を出すべきだし、当然ゴビンダさんの身柄も、刑の執行停止によって自由にすべきだろう。

文責・今井恭平

鈴木DNA鑑定は、再審開始を決定づける明白な証拠


7月23日に東京高裁に提出されたDNA鑑定書(鈴木廣一・大阪医大教授作成)によって何が明らかになったのか。なぜ、それはゴビンダさん無罪の決定的な証拠と言えるのか。

◆前提となる事実(一二審の判決構造)
それを理解するためには、まず東電OL殺人事件で何が争点となったのか、何が一審の無罪と控訴審の有罪という結論を分けたのかをあらためて確認しておくことが必要だ。
一審無罪判決の要点 

  • コンドームは事件当夜に投棄されたものとは言い切れない。
  • 被害者の死体付近に、被告人及び被害者以外の者の陰毛が2本落ちていた。
  • 第三者が101号室に人って本件犯行に及んだ疑いが払拭しきれない。
  • 巣鴨の定期入れ(ゴビンダさんに土地勘のない場所に被害者の遺留品があった)
  • 被害者による101号室独自使用の可能性を否定しきれない。


以上から、情況証拠はいずれも反対解釈の余地があり(有罪とも無罪とも言い切れない)「被告人を犯人とするには合理的疑いが残る」

控訴審逆転有罪の要点 

  1. 現場に遺留されたB型陰毛2本のうちの1本のミトコンドリアDNAが被告人と一致
  2. 現場のトイレに遺棄されたコンドーム内の精液のDNA型が被告人と一致
  3. このコンドーム内の精液は遺棄されてから10日と考えても押尾鑑定結果と矛盾しない
  4. 事件前の2月下旬~3月2日ころまでに被害者と101号室で買春したとの弁明は、被害者の手帳記載(きわめて正確)と照らして信用できない。
  5. S田の目撃証言は信用性が高い。
  6. 3月8日に被告人が101号室に行くことは時間的にも可能
  7. 他方、被告人の言うとおリに、本件犯行が行われる以前から、K荘101号室 の出入口の施錠がされないままになっていたとしても、右アパートに係わりのない被害者が、同室が空室であり、しかも施錠されていないと知って、売春客を連れ込み、あるいは、被告人以外の男性が被害者を右の部屋に連れ込むことは、およそ考え難い事態であること。


最も重要なのは7.であり、他は補完的証拠に過ぎない。

◆鈴木鑑定で判明した事実

被害者の膣内の残留精液(血液型O型)のDNA型は、被害者が最後に一緒にいた馴染み客A氏のものとは一致しない。この型をもつ人物は従来はまったく未知の第三者である。
101号室のカーペット上に残されていた陰毛のうち、1本のDNA型が、この未知の人物X氏のDNA型と一致した。
室内の他の2本の陰毛から、被害者とX氏のDNA型が混合した型が検出された。

ここから分かること
●被害者はゴビンダさんでもA氏でもない未知のXと、101号室内で関係をもった。
●すなわち、控訴審有罪判決の大前提である
「被告人以外の男性が被害者を右の部屋に連れ込むことは、およそ考え難い事態である」
が完全に(推測ではなく)物証によって否定された。
したがって、被告人に無罪を言い渡すべき証拠が新たに発見された場合に相当し、刑訴法435条⑥にいう再審開始事由が満たされたことになる。したがって刑訴法448条第1項にもとづき、東京高裁は再審を開始しなければならない。

註 被害者の血液型はO型、ゴビンダさんはB型。被害者と夜7時から10時ころまで一緒にいた客のA氏もO型。 (殺害時刻は深夜0時前後ころ)


<文責・今井恭平>

ゴビンダさん無実の新たな証拠

新DNA鑑定をめぐる経緯

ゴビンダさんの無罪をより確定的に証明するDNA証拠が明らかになったのは、昨年7月のこと。それ以降の経緯を、まず時間軸にそって整理しておこう。

●2011年 7月21日
讀賣新聞のスクープ(朝刊1面と社会面トップ)
「東電OL殺害 再審可能性」 その後、テレビや各紙夕刊が一斉に報道。
検察は、情報漏れについて何の釈明もないまま、鑑定結果が「再審開始事由にならない」等の非公式コメントをメディアに流し始める。
●7月25日
午後5時、検察が鑑定書を弁護団に開示。鑑定書の日付は7月23日。つまり鑑定書が出来上がる前に、内容の一部がリークされたことになる。
●7月26日
弁護団が鑑定書を証拠申請し「再審請求補充書(8)」を東京高裁に提出。「本日付で提出した鈴木廣一作成の鑑定書は、請求人(ゴビンダさん)に無罪を言い渡すべき明かな新証拠です」として「速やかに再審開始が決定されるべき」と申し立てた。
夕方、司法記者クラブで記者会見した弁護団は、検察に対し、刑の執行停止(釈放)を申し入れたこと、また、法廷外で新証拠の証拠価値に関わるコメントを行っていることに厳重に抗議した、と明らかにした。
●8月4日
支える会と日本国民救援会、東京高検に対する要請行動--「再審の開始を遅れさせる行為は一切しないこと」「ゴビンダさんを直ちに釈放すること」の2点を申し入れ。
●8月10日
裁判所・弁護団・検察の三者協議。検察は、鑑定書を認めるか争うかについて無回答。回答時期についても「今は返答できない」。裁判所は回答時期を一週間以内に明らかにするように要求。→ 後に検察は9月16日までに意見を表明すると回答。
無実のゴビンダさんを支える会と日本国民救援会が高裁に要請行動--「直ちに再審開始を決定し、刑の執行を停止すること」
●9月2日
検察が、さらに42点の証拠を開示し、それらのDNA鑑定を行いたいとの意向を裁判所と弁護団に伝える。→ 弁護団には証拠の一覧表のみ開示
●9月8日
上記42点のうち、被害者の胸部や口に付着していた唾液からO型反応が出たが、B型反応は出なかったという鑑定書を含む証拠が開示される。
この鑑定書の日付は、1997年4月3日。つまり、強盗殺人での逮捕前(別件・オーバーステイのみでの逮捕時)には、被害者の身体から別人の体液が発見されていることが判明していたことになる。
●9月9日
急遽、三者協議が開かれ、弁護団は鈴木鑑定以降にもさらに隠されていた証拠があったことに怒りを表明。これらの証拠のDNA鑑定については今後慎重に検討する、とする。
その後、一部のDNA鑑定について弁護団も同意。42点のうちの15点を3グループに分け、鑑定が先行して行われることとなる。
無実のゴビンダさんを支える会、新たに発覚した証拠隠しに対して抗議声明を公表。
●9月12日
弁護団、唾液に関する新開示鑑定を追加で証拠申請する。
●10月21日
被害者の遺体(右乳房と下半身2箇所)に付着していたO型唾液と膣内残留精液(X)のDNA型の一致が判明。
●11月2日
上記を弁護団が証拠申請。
●11月22日
第2グループの内、被害者の首周辺等のDNA型は検出不能と判明。
●12月27日 本年最後の三者協議。第3グループの6つの鑑定試料のうち、5つまで鑑定終了。有意な結果なし。残り1点は鑑定中。今年1月24日に三者協議。
●2012年 1月20日
讀賣新聞等の報道で、昨年末に1点残っていた鑑定試料(被害者の下着)からもゴビンダさんのDNAは検出されなかったことが判明。
●1月24日 三者協議
15点の追加鑑定の正式な鑑定書が出来上がるのが2月末になる、という理由で、検察は意見書提出を3月16日まで引き延ばし。その後19日に三者協議がもたれる。弁護団は鑑定結果が出るつど、再審請求補充書を提出しており、検察のこの時間稼ぎは許されるものではない。
3月19日の三者協議で東京高裁が事実調べの打ち切りを決定し、ただちに再審開始決定を作成するプロセスに入ることが問われている。

<文責・今井恭平>