2012年5月25日金曜日
再審請求退ける不当決定 「名張毒ぶどう酒事件」
本日、午前10時、名古屋高等裁判所(下山保男裁判長)は、名張毒ぶどう酒事件(1961年)の無実の死刑囚、奥西勝さん(86歳)の再審請求を、再び棄却する不当決定を行った。
奥西さんは、05年名古屋高裁で再審開始決定を勝ち取ったが、検察の異議申し立てにより、06年同じ名古屋高裁(門野博裁判長)で決定を取り消され、最高裁に特別抗告。最高裁は、犯行に使われた毒物が奥西さんの所有していたニッカリンTと同一であるか否かの科学鑑定について、審理が尽くされていないとして名古屋高裁に差し戻していた。
今回の棄却決定は、毒物には、ニッカリンTとは異なる物質が含まれてはいるが、経年変化などで生じた可能性もあるとして、ニッカリンTではないとは言い切れないと認定した。「疑わしきは被告人の利益に」の大原則を裁判所自らが投げ捨てた認定と言わざるを得ない。
さらに捜査段階の「自白」は「根幹部分で信用できる」と述べ、数々の無罪証拠を無視した上で、虚偽自白に依拠した決定を行った。
86歳と高齢で、体調もすぐれない奥西さんが待ち望んでいた吉報はまたしても裏切られ、さらに再審開始が先延ばしとなった。決定後、奥西さんに面会した弁護団によれば、奥西さんは「ありがとう」とまず弁護団の労をねぎらい、「今回は残念だったが、次の勝利を信じているので、一層の支援をお願いします」と話したという。
鈴木泉弁護団長は、ただちに特別抗告の準備に取りかかる、と言明した。
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ニッカリンTが犯行に使用されたか否かの論点について、検察側主張が破綻していることは、本誌13号「名古屋高裁よ、三度目の過ちは許されない!」で詳しく紹介している。