2012年6月27日水曜日

延々と続く大分清川女性殺害事件控訴審 一年を経ても結審の見通しすら立たず


本誌15号で取り上げた大分清川女性殺害事件の控訴審が7月で初公判から一年を迎える。

  大分地裁(宮本孝文裁判長)の第一審では2010年2月、強盗殺人罪や住居侵入罪で起訴された男性・伊東順一さんが完全無罪判決(求刑は無期懲役)を言い渡されたが、大分地検が控訴。昨年7月から始まった福岡高裁(服部悟裁判長)の控訴審では、検察側が延々と証人を請求し続け、裁判官がそれをことごとく採用するため、審理が長期化している。現時点で年内にあと3回の公判が開かれる予定だが、一年以上の審理を経ても結審の見通しすら立たない状況だ。
弁護側によれば、今月19日の第16回公判までに法廷で取り調べられた証人は30人を突破。弁護人の一人は「裁判官は今のところ、検察官が控訴審になって請求した証人をすべて採用している。この感じだと、最終的に50人以上の証人を調べるのではないかと思うが、一体いつまで続くのか・・・・・・」と疲れをにじませた。伊東さん本人は現在、公判に出廷していないが、第一審では計32回の審理を経て無罪判決を勝ち取ったにも関わらず、その後も延々と被告人という立場に置かれ続けている状況に当然のごとく怒っているという。
本誌で詳報した通り、有罪証拠は事実上、捜査段階の自白しか存在しなかった上、その自白も様々な点で疑わしく、第一審の無罪判決はきわめて妥当だったこの事件。検察側は控訴したものの、控訴審でもめぼしい物証は何も提示できず、次々に出廷する検察側証人からも有罪を裏付ける証言は何も出てこない。被告人側が一審判決を不服として控訴した場合、控訴審は1、2回の審理ですみやかに終結して控訴棄却されるのが通常なのに、検察側が無罪判決を不服として控訴した場合、なぜこんなことになるのか・・・・・・あまりにもアンフェアな裁判がいま、福岡高裁で延々と続いている。
                                      
                                          <文責・片岡健

                                                              
【大分清川女性殺害事件】
2005年3月、大分県の大野郡清川村(現在は豊後大野市清川町)で一人暮らしをしていた女性・山口範子さんが自宅敷地内で何者かに頭部を執拗に殴打されて殺害され、遺体で発見される。約2年後、山口さんの知人である伊東さんが強盗殺人などの容疑で逮捕・起訴され、いったんは自白に追い込まれたが、公判では否認。第一審・大分地裁の宮本裁判長は、自白の信用性を否定し、伊東さんに無罪判決を言い渡すと共に取り調べの一部について、「令状主義を潜脱する違法なものであった可能性を否定できない」と批判していた。