11月7日「東電OL殺人事件」で、ゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)に無罪判決が言い渡された。検察が上告断念を明らかにしたため、無罪が確定した。
同日午前10時30分、開廷すると、東京高裁第4刑事部の小川正持裁判長は、ただちに「本件控訴を棄却する」という判決主文を読み上げた。
本ブログでは、再審第一回公判をレポートした際、以下のように指摘した。
「弁護団は意見陳述の中で、無罪判決に対する検察官控訴のあり方や、証拠隠しによる有罪という、この冤罪事件の本質を指摘し、裁判所に対しても、逆転有罪を許した過ちに判決の中で言及することを求めた。
判決は11月7日に言い渡されるが、この中で東京高裁が自らの誤審の検証に踏み込めるか否かに注目が集まる」
結論を言えば、東京高裁は、ゴビンダさんを逆転有罪にした最初の控訴審(2000年12月・高木俊夫裁判長)による誤判の内容には一言も触れなかった。そして、一審無罪判決が正しかった、と追認しただけで、検察官の控訴棄却(一審無罪判決の追認)を行った。
この裁判は、控訴審のやり直しとしての再審である以上、一審判決直後に戻って、そこから審理をやり直した、という意味では、裁判手続き上は確かに問題ないのかもしれない。
だが、再審公判で弁護団が要求していた逆転有罪の過ちにも触れず、15年もゴビンダさんの自由と尊厳を奪ってきたことへの一言の謝罪もない判決に、傍聴席からは「それ以外に言うことがあるだろう」「謝罪せよ」などの声が飛んだ。
無実のゴビンダさんを支える会と日本国民救援会が、判決直後に開いた報告集会で発言した布川事件の桜井昌司さんは「裁判官である前に、人間であるべきだ。そういう心がないから裁判官は過ちを犯すのだ」と指摘した。
支える会と救援会は、11月12日、最高裁と最高検に申し入れに行き、誤判の徹底した糾明と司法改革に取り組むこと、その前提としてゴビンダさんに謝罪することを要求した。ことに、高裁の逆転有罪を追認して有罪を確定させ、また無罪判決を受けたゴビンダさんを職権で再勾留した最高裁が口を拭っていることは、とうてい許されるものではない。
マスコミ報道でも、多くが裁判所からの謝罪がなかったことについて言及していた。
(今井恭平)