2013年3月5日火曜日

3月10日 袴田巌さん誕生日(77歳)リレーアピールを開催

 無実の死刑囚、袴田巌さんは、来る3月10日、東京拘置所の中で77歳の誕生日を迎える。
 再審請求は、DNA鑑定を行った鑑定人の証人尋問を終え、有罪証拠とされた「5点の衣類」が警察による捏造であることが科学的に明らかにされた。ただちに再審を開始すべきことは疑いもない。そして一日も早く袴田さんを獄から解放し、心身の健康を取り戻すために、適切な医療を急がなければならない。
 袴田さんを支援する広範な市民団体が、誕生日のこの日、街頭で袴田さんの無実と再審開始を訴えるバースデー・リレーアピール」を行う。
 この間、再審無罪を勝ち取った氷見事件、足利事件、布川事件、東電女性社員殺人事件(ゴビンダさん冤罪事件)の当事者や支援者も応援に駆けつける。これだけ広範な冤罪再審支援の人たちが一堂に会することは珍しい。それだけ、冤罪・再審への関心が高まっていることを示すとともに、高齢となった袴田さんの救援が時間との勝負であることも物語っている。
  当日は3-11東日本大震災、福島原発事故2周年の前日で、反原発などの大きな動きも街頭などで繰り広げられる。こうした中で、国家による犯罪である冤罪の訴えを行うことには、大きな意義がある。多くの方が有楽町マリオン前に集まり、袴田さんの無実の訴えを受け止めていただきたい。
日時:3月10日(日)13時~14時半(小雨決行)
場所:有楽町マリオン前
主催:袴田巌さんは無実だ!バースデー・リレーアピール実行委員会
挨拶:袴田ひで子さん(巌さんの実姉)
構成団体:日本国民救援会/袴田巌さんの再審を求める会/袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/袴田巌さんを救援する静岡県民の会/浜松・袴田巌さんを救う会/無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会/アムネスティ・インターナショナル日本/日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会(要請中)
応援参加:桜井昌司さん(布川事件)杉山卓男さん(布川事件)菅家利和さん(足利事件)柳原浩さん(氷見事件)赤堀政夫さん(島田事件)その他

2013年1月9日水曜日

滋賀「人工呼吸器外し患者殺害」事件、2度目の再審請求で雪冤なるか

冤罪File第16号で取り上げた滋賀県の「人工呼吸器外し患者殺害」事件で懲役12年の判決を受け、和歌山刑務所に服役中の西山美香さん(33)から手紙が届いた。
 西山さんは24歳だった2004年7月、看護助手として働いていた病院で谷榮次郎さん(72)という男性入院患者の人工呼吸器のチューブを外し、殺害したという容疑で逮捕された。それから8年以上も拘禁生活が続く彼女は昨年9月、大津地裁に2度目の再審請求をしたのだが、手紙には、自分の雪冤のために駆けずり回ってくれている両親への思いが切々と綴られていた。
 <私は 谷さんを殺ろしてはいませんが 人間関係をきずくのが苦手で かんてい書にもあったように 人の意見に合わしてしまうところがあり その結果 私は自分のことだから なっとくするようにしていますが お父さん お母さんは大事な娘をうばわれてしまった気持ちを考えると胸がつまる思いです。
 それに面会にも月2回来てくれますが アクリル板ごしにしか会えず 手をつなぐことすらゆるされません。
 その気持ちを考えると 自分のあかさかな行動を反省するとともに両親のありがたみを感じながら これからの生活をしてあげないといけないと思っています。>※すべて原文ママ
 冤罪を訴える人のわりには、「反省」するような言葉が並んでいる。これは冤罪Fileで既報の通り、西山さんが任意捜査の段階で札付きの暴力刑事だった男性捜査官に好意を寄せてしまい、その好意につけこまれる形で自白に追い込まれ、被疑者とされたことに対し、自分にも落ち度があったように感じているためだ。
しかし、西山さんの裁判で事実上唯一の有罪証拠である捜査段階の自白は内容的に非常に不自然で、変遷も激しかった。また、人工呼吸器のチューブが勝手に外れる「よくある医療事故」である可能性がろくに検証されないまま、殺人事件と決めつけられているなど、捜査も裁判もきわめて杜撰なものだった。問題とされるべきは、あくまで自白偏重の捜査や推定有罪の裁判のあり方であることは動かしがたい事案である。
2010年9月になされた1回目の再審請求で弁護人は、西山さんの自白は虚偽だと断じた心理学者の鑑定書などを無罪の新証拠として提出したが、請求はわずか半年で棄却されている。今回の2度目の再審請求では、人工呼吸器のチューブが外れてもアラームが鳴らなかった事例の報告書などが新証拠として提出されたが、西山さんや両親の無実の訴えは今度こそ裁判官たちに届くだろうか。
亡くなった谷さんやご遺族の方々のためにも、真っ当な司法判断がなされて欲しいものである。
 
(片岡健)

2012年12月13日木曜日

舞鶴女子高生殺害事件 中勝美氏に逆転無罪(大阪高裁)

 2008年5月7日に発生した「舞鶴女子高生殺害事件」の控訴審判決が12月12日、大阪高裁で行われた。川合昌幸裁判長は中勝美氏(64歳)に無罪の判決を言い渡した。2011年5月18日に京都地裁(笹野明義裁判長)が下した無期懲役の有罪判決を破棄したものである。
『冤罪File』、は第13号(2011年7月号)でこの事件を詳報し、検察は被告人の有罪立証に完全に失敗した、有罪根拠は何一つ存在しないと指摘、無罪であるべきだと主張した。しかし一審は、変遷を繰り返しているばかりか、明らかに警察によってバイアスをかけられた目撃証言や、捜査当局の誘導の痕跡の明かな被告人の供述だけを根拠に、有罪としてしまった。
 控訴審判決は、これらの有罪根拠をいずれも「経験則、論理則に照らして合理的とはいいがたい」としりぞけ、無罪とした。
 これらの事実認定は、直接証拠が存在しない中で、あいまいな目撃証言や誘導された供述の問題点を指摘しており、納得のいく判決である。
 ことに、検察官による取調べの実態について突っ込んだ考察を行い、供述が誘導されうる情況であったことを指摘している点は注目に値する。これまで密室の取調室で繰り返されてきた冤罪製造(供述調書のでっち上げ)の教訓を汲み取り、捜査当局に反省を迫るものとなっている。
 また一審無罪(裁判員)--控訴審逆転有罪(小倉正三裁判長)を、最高裁が再度逆転無罪とした2月13日の画期的判決で示された、安易な有罪認定に歯止めをかける基準(経験則・論理則違反の具体的提示)を踏襲している点でも評価できる。
 だが一方、マスコミの多くが、相変わらず「無罪で悔しい」という被害者遺族の声をたんにそのまま伝達するにとどまり、冤罪を防止していこうとする流れに目を向けない報道を続けていることに失望を禁じ得ない。足利、布川、福井、東住吉、東電OLと、連続する重大事件の再審の流れを直視するなら、たんに被告人、被害者双方の声を等しく伝えました、などという従来通りの安易な報道でお茶を濁すことは出来ない筈である。
(今井恭平)

2012年11月14日水曜日

ゴビンダさん無罪確定--しかし検察からも裁判所からも謝罪なし。多く残された、重大な課題

11月7日「東電OL殺人事件」で、ゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)に無罪判決が言い渡された。検察が上告断念を明らかにしたため、無罪が確定した。
同日午前10時30分、開廷すると、東京高裁第4刑事部の小川正持裁判長は、ただちに「本件控訴を棄却する」という判決主文を読み上げた。
本ブログでは、再審第一回公判をレポートした際、以下のように指摘した。
「弁護団は意見陳述の中で、無罪判決に対する検察官控訴のあり方や、証拠隠しによる有罪という、この冤罪事件の本質を指摘し、裁判所に対しても、逆転有罪を許した過ちに判決の中で言及することを求めた。
判決は11月7日に言い渡されるが、この中で東京高裁が自らの誤審の検証に踏み込めるか否かに注目が集まる」
結論を言えば、東京高裁は、ゴビンダさんを逆転有罪にした最初の控訴審(2000年12月・高木俊夫裁判長)による誤判の内容には一言も触れなかった。そして、一審無罪判決が正しかった、と追認しただけで、検察官の控訴棄却(一審無罪判決の追認)を行った。
この裁判は、控訴審のやり直しとしての再審である以上、一審判決直後に戻って、そこから審理をやり直した、という意味では、裁判手続き上は確かに問題ないのかもしれない。
だが、再審公判で弁護団が要求していた逆転有罪の過ちにも触れず、15年もゴビンダさんの自由と尊厳を奪ってきたことへの一言の謝罪もない判決に、傍聴席からは「それ以外に言うことがあるだろう」「謝罪せよ」などの声が飛んだ。
無実のゴビンダさんを支える会と日本国民救援会が、判決直後に開いた報告集会で発言した布川事件の桜井昌司さんは「裁判官である前に、人間であるべきだ。そういう心がないから裁判官は過ちを犯すのだ」と指摘した。
支える会と救援会は、11月12日、最高裁と最高検に申し入れに行き、誤判の徹底した糾明と司法改革に取り組むこと、その前提としてゴビンダさんに謝罪することを要求した。ことに、高裁の逆転有罪を追認して有罪を確定させ、また無罪判決を受けたゴビンダさんを職権で再勾留した最高裁が口を拭っていることは、とうてい許されるものではない。
マスコミ報道でも、多くが裁判所からの謝罪がなかったことについて言及していた。
(今井恭平)

2012年10月31日水曜日

ゴビンダさん再審、1回で結審--裁判所は自らの過ちを検証できるか?

ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの再審公判は、10月29日午前10時半に開廷し、わずか25分の審理をへて1回で結審した。
検察は被害者の手指の爪から「376の男」のDNAが検出されたという鑑定書を証拠申請し、自ら無罪を主張した。
弁護側は、被害者の衣服や身体、事件現場から同じく「376の男」のDNAが検出された証拠や、被害者の身体にO型唾液が付着していたことなどを証拠提出し、やはり無罪を主張した。
双方が無罪を主張する中で、審理は1回で結審した。
審理終結にあたって、裁判長は弁護、検察双方に意見を求めたが、検察はつい10日ほど前までの有罪主張を無罪に変えるという大転換をしながら、何一つ意見表明も行わなかった。
弁護側は、検察は一審無罪判決に対して控訴したこと自体が誤りであったことを認め、控訴を自ら取り下げるべきだと主張したが、これにも検察は答えなかった。
ゴビンダさんは再審公判を前に、検察に対して謝罪を求めることを表明していた。だが、東京高検は「謝罪も事件の検証も必要ない」という態度を変えなかった。
しかし、公判の終結直後に青沼孝之次席検事が「結果として長期間拘束したことは申し訳なかった」と形だけの談話を発表した。
弁護団は意見陳述の中で、無罪判決に対する検察官控訴のあり方や、証拠隠しによる有罪という、この冤罪事件の本質を指摘し、裁判所に対しても、逆転有罪を許した過ちに判決の中で言及することを求めた。
判決は11月7日に言い渡されるが、この中で東京高裁が自らの誤審の検証に踏み込めるか否かに注目が集まる。
<文責 今井恭平>

2012年10月5日金曜日

布川事件の桜井さんがいよいよ11月12日に国賠訴訟を提起 支援する会も船出


昨年、晴れて再審無罪判決を勝ち取った布川事件の桜井昌司さんが国と県を相手取って起こす国家賠償請求訴訟を支援する会(名称は『冤罪・布川事件の国家賠償請求訴訟を支援する会』)が結成され、その結成総会が1日、東京都文京区の「文京区民センター」で開かれた。会には、全国各地から60人以上が参加。足利事件の菅家利和さんや氷見事件の柳原浩さんら著名冤罪被害者も激励に訪れ、盛況な船出となった。

 会はまず、かねてより国賠訴訟を提起することを表明していた桜井さんの挨拶で始まった。桜井さんは、「冤罪が次々明らかになるようになった今も警察や検察、裁判所は何も変わっていない。冤罪が作られる原因を取り除くには、国賠しかないと思った」と国や県を相手に訴訟を起こす意図を説明。「3年以内に勝つことを目標に全力で突っ走る。今も自分たちを犯人だと言い続ける検察に『申し訳なかった』と言わせたい」と決意表明した。

 その後にあった谷萩陽一弁護団長の説明では、この国賠訴訟の意義は、(1)桜井さんの救済、(2)冤罪を生んだ公務員一人ひとりの責任を明らかにすること、(3)冤罪を二度と生まない刑事司法の改革に結びつけること――の3点。検察による数多くの証拠隠しが指摘されてきたこの事件では、再審でも隠されたままだった無罪証拠が多数ある見込みのようで、それらが国賠訴訟の中でどれだけ明らかになるかが勝負の大きなポイントになりそうだ。

 弁護団は11月12日の13時に東京地裁に訴状を提出予定。支援する会も当日は東京地裁に駆けつけて宣伝活動を行う予定だ。

片岡健


 挨拶する桜井さん。左は、支援する会の中澤宏事務局長



国賠の意義などを説明する谷萩弁護団長



満員となった会場



応援に駆けつけた管家さん



応援に駆けつけた柳原さん



司会を務めた「無実のゴビンダさんを支える会」の客野美喜子事務局長

2012年9月20日木曜日

冤罪布川事件・国家賠償請求訴訟を支援する会 「結成総会」参加の呼びかけ


布川事件の桜井さん・杉山さんは2011年5月24日無罪判決を得て、守る会も2012年5月26日、目的を達成して解散しました。しかしこの無罪判決は誤判の原因と責任を明らかにしておらず、検察・警察は未だに二人を犯人と強弁する姿勢を崩していません。
 桜井さんは、検察・警察・裁判所の責任を追及し、冤罪をなくすため全証拠の開示・取調べの全面可視化の制度を実現することを目指して、国家賠償請求訴訟をおこすことを決意しました。
 私達有志は、桜井さんのこの決意に応えて、布川事件の国賠請求訴訟を支援する会を立ち上げることにしました。是非ご参加・ご入会ください。

 と き 10月1日午後6時30分
 ところ 文京区民センター3-C   
 ・都営地下鉄三田線・大江戸線 春日駅 徒歩1分
 ・営団地下鉄丸の内線 後楽園駅 徒歩3分
 ・JR 水道橋駅 徒歩7分    03(3814)6731


 布川国賠を支援する会準備会