西山さんは24歳だった2004年7月、看護助手として働いていた病院で谷榮次郎さん(72)という男性入院患者の人工呼吸器のチューブを外し、殺害したという容疑で逮捕された。それから8年以上も拘禁生活が続く彼女は昨年9月、大津地裁に2度目の再審請求をしたのだが、手紙には、自分の雪冤のために駆けずり回ってくれている両親への思いが切々と綴られていた。
<私は 谷さんを殺ろしてはいませんが 人間関係をきずくのが苦手で かんてい書にもあったように 人の意見に合わしてしまうところがあり その結果 私は自分のことだから なっとくするようにしていますが お父さん お母さんは大事な娘をうばわれてしまった気持ちを考えると胸がつまる思いです。
それに面会にも月2回来てくれますが アクリル板ごしにしか会えず 手をつなぐことすらゆるされません。
その気持ちを考えると 自分のあかさかな行動を反省するとともに両親のありがたみを感じながら これからの生活をしてあげないといけないと思っています。>※すべて原文ママ
冤罪を訴える人のわりには、「反省」するような言葉が並んでいる。これは冤罪Fileで既報の通り、西山さんが任意捜査の段階で札付きの暴力刑事だった男性捜査官に好意を寄せてしまい、その好意につけこまれる形で自白に追い込まれ、被疑者とされたことに対し、自分にも落ち度があったように感じているためだ。
しかし、西山さんの裁判で事実上唯一の有罪証拠である捜査段階の自白は内容的に非常に不自然で、変遷も激しかった。また、人工呼吸器のチューブが勝手に外れる「よくある医療事故」である可能性がろくに検証されないまま、殺人事件と決めつけられているなど、捜査も裁判もきわめて杜撰なものだった。問題とされるべきは、あくまで自白偏重の捜査や推定有罪の裁判のあり方であることは動かしがたい事案である。
2010年9月になされた1回目の再審請求で弁護人は、西山さんの自白は虚偽だと断じた心理学者の鑑定書などを無罪の新証拠として提出したが、請求はわずか半年で棄却されている。今回の2度目の再審請求では、人工呼吸器のチューブが外れてもアラームが鳴らなかった事例の報告書などが新証拠として提出されたが、西山さんや両親の無実の訴えは今度こそ裁判官たちに届くだろうか。
亡くなった谷さんやご遺族の方々のためにも、真っ当な司法判断がなされて欲しいものである。