2014年10月6日月曜日

お詫びと発売日延期のお知らせ


冤罪File7月増刊NO.21号におきまして、次号の発売日を9月28日と予告しておりましたが、諸事情により発売が来春まで延期となりました。
正式な発売日については、決まり次第本サイトにてご案内いたします。読者の皆様、関係者の皆様にご迷惑をおかけしておりますことを謹んでお詫び申し上げます。

冤罪ファイル編集局

2014年3月28日金曜日

袴田巖さん 48年ぶりの雪冤へ確かな一歩

捜査当局のねつ造を厳しく批判した画期的再審開始決定

2014年3月27日、午前10時、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は袴田巖さん(78歳)に対する再審開始の決定書を、姉の秀子さんや弁護団に手渡した。
 決定は、「ほぼ弁護団の主張をそのまま認めたといってよい」と西嶋弁護団長らが高く評価するように、これまで指摘され続けてきた無実の証拠と捜査当局による証拠ねつ造を明確に認定したものとなっている。
 ことに原審で有罪の最大根拠とされた「5点の着衣」について、ねつ造との疑いを払拭できないなどと指摘したことの意味は大きい。
 その上で、これ以上の拘置を続けることは「耐えがたい不正義」であるとして、死刑の執行停止だけでなく、拘置の停止(釈放)も決定した。
 静岡地検はこの決定に抵抗し、拘置を続けるようにとの抗告を行ったが、静岡高裁は「拘置の停止を取り消す職権発動はしない」と決定。即日、袴田さんの釈放が決まった。
 午前11時半からの記者会見を途中で退席した秀子さんは、ただちに東京拘置所に袴田さんを出迎えるために出発。
 東拘では3年半ぶりに面会が実現(この間、袴田さんは面会を断り続けてきた)。「再審開始だよ、釈放されるんだよ」という秀子さんの声に「嘘だ」と信じられない様子だったというが、それから数時間後には本当に釈放となり、秀子さんや弁護団とともに47年9ヶ月ぶりに自由を取り戻して外の世界への一歩を踏み出した。
 弁護団によれば、窓の外の景色をじっと見ていたが、めだった反応はなかった。しかし途中で休憩のために車を停めると「歩きたい」といって外に出て、周囲を歩き回った。
 「自由に歩けるんですよ。釈放されたこと分かりますか」と尋ねると「ありがとう」との答えが返ってきたという。
 袴田さんは高齢に加え、確定死刑囚としての長い拘禁によって苦しめられた肉体と精神の健康を回復するために今後、しばらく療養しつつ再審にそなえるものと思われる。

今井恭平

2014年1月6日月曜日

謹賀新年

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

「冤罪File」第21号は、
2014年5月発売の予定です。

新たな誌面でリスタートする次号に、どうぞご期待ください。


2013年12月3日火曜日

無実の死刑囚奥西勝さん・袴田巖さんを救え!!12・8 支援の集い


冤罪File が協賛する上記集会が以下のとおり開催されます。

2013年12月8日(日)
午後1:30~4:00(開場 午後1:00)
日比谷コンベンションホール(日比谷図書館地下)
 会場へのアクセス  http://hibiyal.jp/hibiya/access.html
協力券・500円

主催 実行委員会
協賛 『冤罪File』

●記念講演
「死刑再審事件の現状と課題」
 大出良知・東京経済大学現代法学部教授
●名張毒ぶどう酒事件弁護団報告
●冤罪袴田事件・朗読劇
●サックス演奏 中川美保

名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さん(87歳)は事件発生から52年間、袴田事件の袴田巖さん(77歳)は事件発生から47年間、無実を訴え続け、裁判のやり直しを求めています。両氏は、死刑の恐怖と長い過酷な獄中生活のなかで健康も心配されています。
 足利、布川、東電OL事件で再審無罪が確定する一方で、死刑再審について裁判所、検察は頑なに再審開始を阻もうとしています。ぜひ、多くのみなさんに名張、袴田両死刑再審事件の真実を知っていただき、支援を拡大するために、以下のような集会を行います。ぜひ多くの方々のご参加をお願いいたします。

2013年3月5日火曜日

3月10日 袴田巌さん誕生日(77歳)リレーアピールを開催

 無実の死刑囚、袴田巌さんは、来る3月10日、東京拘置所の中で77歳の誕生日を迎える。
 再審請求は、DNA鑑定を行った鑑定人の証人尋問を終え、有罪証拠とされた「5点の衣類」が警察による捏造であることが科学的に明らかにされた。ただちに再審を開始すべきことは疑いもない。そして一日も早く袴田さんを獄から解放し、心身の健康を取り戻すために、適切な医療を急がなければならない。
 袴田さんを支援する広範な市民団体が、誕生日のこの日、街頭で袴田さんの無実と再審開始を訴えるバースデー・リレーアピール」を行う。
 この間、再審無罪を勝ち取った氷見事件、足利事件、布川事件、東電女性社員殺人事件(ゴビンダさん冤罪事件)の当事者や支援者も応援に駆けつける。これだけ広範な冤罪再審支援の人たちが一堂に会することは珍しい。それだけ、冤罪・再審への関心が高まっていることを示すとともに、高齢となった袴田さんの救援が時間との勝負であることも物語っている。
  当日は3-11東日本大震災、福島原発事故2周年の前日で、反原発などの大きな動きも街頭などで繰り広げられる。こうした中で、国家による犯罪である冤罪の訴えを行うことには、大きな意義がある。多くの方が有楽町マリオン前に集まり、袴田さんの無実の訴えを受け止めていただきたい。
日時:3月10日(日)13時~14時半(小雨決行)
場所:有楽町マリオン前
主催:袴田巌さんは無実だ!バースデー・リレーアピール実行委員会
挨拶:袴田ひで子さん(巌さんの実姉)
構成団体:日本国民救援会/袴田巌さんの再審を求める会/袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/袴田巌さんを救援する静岡県民の会/浜松・袴田巌さんを救う会/無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会/アムネスティ・インターナショナル日本/日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会(要請中)
応援参加:桜井昌司さん(布川事件)杉山卓男さん(布川事件)菅家利和さん(足利事件)柳原浩さん(氷見事件)赤堀政夫さん(島田事件)その他

2013年1月9日水曜日

滋賀「人工呼吸器外し患者殺害」事件、2度目の再審請求で雪冤なるか

冤罪File第16号で取り上げた滋賀県の「人工呼吸器外し患者殺害」事件で懲役12年の判決を受け、和歌山刑務所に服役中の西山美香さん(33)から手紙が届いた。
 西山さんは24歳だった2004年7月、看護助手として働いていた病院で谷榮次郎さん(72)という男性入院患者の人工呼吸器のチューブを外し、殺害したという容疑で逮捕された。それから8年以上も拘禁生活が続く彼女は昨年9月、大津地裁に2度目の再審請求をしたのだが、手紙には、自分の雪冤のために駆けずり回ってくれている両親への思いが切々と綴られていた。
 <私は 谷さんを殺ろしてはいませんが 人間関係をきずくのが苦手で かんてい書にもあったように 人の意見に合わしてしまうところがあり その結果 私は自分のことだから なっとくするようにしていますが お父さん お母さんは大事な娘をうばわれてしまった気持ちを考えると胸がつまる思いです。
 それに面会にも月2回来てくれますが アクリル板ごしにしか会えず 手をつなぐことすらゆるされません。
 その気持ちを考えると 自分のあかさかな行動を反省するとともに両親のありがたみを感じながら これからの生活をしてあげないといけないと思っています。>※すべて原文ママ
 冤罪を訴える人のわりには、「反省」するような言葉が並んでいる。これは冤罪Fileで既報の通り、西山さんが任意捜査の段階で札付きの暴力刑事だった男性捜査官に好意を寄せてしまい、その好意につけこまれる形で自白に追い込まれ、被疑者とされたことに対し、自分にも落ち度があったように感じているためだ。
しかし、西山さんの裁判で事実上唯一の有罪証拠である捜査段階の自白は内容的に非常に不自然で、変遷も激しかった。また、人工呼吸器のチューブが勝手に外れる「よくある医療事故」である可能性がろくに検証されないまま、殺人事件と決めつけられているなど、捜査も裁判もきわめて杜撰なものだった。問題とされるべきは、あくまで自白偏重の捜査や推定有罪の裁判のあり方であることは動かしがたい事案である。
2010年9月になされた1回目の再審請求で弁護人は、西山さんの自白は虚偽だと断じた心理学者の鑑定書などを無罪の新証拠として提出したが、請求はわずか半年で棄却されている。今回の2度目の再審請求では、人工呼吸器のチューブが外れてもアラームが鳴らなかった事例の報告書などが新証拠として提出されたが、西山さんや両親の無実の訴えは今度こそ裁判官たちに届くだろうか。
亡くなった谷さんやご遺族の方々のためにも、真っ当な司法判断がなされて欲しいものである。
 
(片岡健)

2012年12月13日木曜日

舞鶴女子高生殺害事件 中勝美氏に逆転無罪(大阪高裁)

 2008年5月7日に発生した「舞鶴女子高生殺害事件」の控訴審判決が12月12日、大阪高裁で行われた。川合昌幸裁判長は中勝美氏(64歳)に無罪の判決を言い渡した。2011年5月18日に京都地裁(笹野明義裁判長)が下した無期懲役の有罪判決を破棄したものである。
『冤罪File』、は第13号(2011年7月号)でこの事件を詳報し、検察は被告人の有罪立証に完全に失敗した、有罪根拠は何一つ存在しないと指摘、無罪であるべきだと主張した。しかし一審は、変遷を繰り返しているばかりか、明らかに警察によってバイアスをかけられた目撃証言や、捜査当局の誘導の痕跡の明かな被告人の供述だけを根拠に、有罪としてしまった。
 控訴審判決は、これらの有罪根拠をいずれも「経験則、論理則に照らして合理的とはいいがたい」としりぞけ、無罪とした。
 これらの事実認定は、直接証拠が存在しない中で、あいまいな目撃証言や誘導された供述の問題点を指摘しており、納得のいく判決である。
 ことに、検察官による取調べの実態について突っ込んだ考察を行い、供述が誘導されうる情況であったことを指摘している点は注目に値する。これまで密室の取調室で繰り返されてきた冤罪製造(供述調書のでっち上げ)の教訓を汲み取り、捜査当局に反省を迫るものとなっている。
 また一審無罪(裁判員)--控訴審逆転有罪(小倉正三裁判長)を、最高裁が再度逆転無罪とした2月13日の画期的判決で示された、安易な有罪認定に歯止めをかける基準(経験則・論理則違反の具体的提示)を踏襲している点でも評価できる。
 だが一方、マスコミの多くが、相変わらず「無罪で悔しい」という被害者遺族の声をたんにそのまま伝達するにとどまり、冤罪を防止していこうとする流れに目を向けない報道を続けていることに失望を禁じ得ない。足利、布川、福井、東住吉、東電OLと、連続する重大事件の再審の流れを直視するなら、たんに被告人、被害者双方の声を等しく伝えました、などという従来通りの安易な報道でお茶を濁すことは出来ない筈である。
(今井恭平)