2014年3月28日金曜日

袴田巖さん 48年ぶりの雪冤へ確かな一歩

捜査当局のねつ造を厳しく批判した画期的再審開始決定

2014年3月27日、午前10時、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は袴田巖さん(78歳)に対する再審開始の決定書を、姉の秀子さんや弁護団に手渡した。
 決定は、「ほぼ弁護団の主張をそのまま認めたといってよい」と西嶋弁護団長らが高く評価するように、これまで指摘され続けてきた無実の証拠と捜査当局による証拠ねつ造を明確に認定したものとなっている。
 ことに原審で有罪の最大根拠とされた「5点の着衣」について、ねつ造との疑いを払拭できないなどと指摘したことの意味は大きい。
 その上で、これ以上の拘置を続けることは「耐えがたい不正義」であるとして、死刑の執行停止だけでなく、拘置の停止(釈放)も決定した。
 静岡地検はこの決定に抵抗し、拘置を続けるようにとの抗告を行ったが、静岡高裁は「拘置の停止を取り消す職権発動はしない」と決定。即日、袴田さんの釈放が決まった。
 午前11時半からの記者会見を途中で退席した秀子さんは、ただちに東京拘置所に袴田さんを出迎えるために出発。
 東拘では3年半ぶりに面会が実現(この間、袴田さんは面会を断り続けてきた)。「再審開始だよ、釈放されるんだよ」という秀子さんの声に「嘘だ」と信じられない様子だったというが、それから数時間後には本当に釈放となり、秀子さんや弁護団とともに47年9ヶ月ぶりに自由を取り戻して外の世界への一歩を踏み出した。
 弁護団によれば、窓の外の景色をじっと見ていたが、めだった反応はなかった。しかし途中で休憩のために車を停めると「歩きたい」といって外に出て、周囲を歩き回った。
 「自由に歩けるんですよ。釈放されたこと分かりますか」と尋ねると「ありがとう」との答えが返ってきたという。
 袴田さんは高齢に加え、確定死刑囚としての長い拘禁によって苦しめられた肉体と精神の健康を回復するために今後、しばらく療養しつつ再審にそなえるものと思われる。

今井恭平