2012年10月31日水曜日

ゴビンダさん再審、1回で結審--裁判所は自らの過ちを検証できるか?

ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの再審公判は、10月29日午前10時半に開廷し、わずか25分の審理をへて1回で結審した。
検察は被害者の手指の爪から「376の男」のDNAが検出されたという鑑定書を証拠申請し、自ら無罪を主張した。
弁護側は、被害者の衣服や身体、事件現場から同じく「376の男」のDNAが検出された証拠や、被害者の身体にO型唾液が付着していたことなどを証拠提出し、やはり無罪を主張した。
双方が無罪を主張する中で、審理は1回で結審した。
審理終結にあたって、裁判長は弁護、検察双方に意見を求めたが、検察はつい10日ほど前までの有罪主張を無罪に変えるという大転換をしながら、何一つ意見表明も行わなかった。
弁護側は、検察は一審無罪判決に対して控訴したこと自体が誤りであったことを認め、控訴を自ら取り下げるべきだと主張したが、これにも検察は答えなかった。
ゴビンダさんは再審公判を前に、検察に対して謝罪を求めることを表明していた。だが、東京高検は「謝罪も事件の検証も必要ない」という態度を変えなかった。
しかし、公判の終結直後に青沼孝之次席検事が「結果として長期間拘束したことは申し訳なかった」と形だけの談話を発表した。
弁護団は意見陳述の中で、無罪判決に対する検察官控訴のあり方や、証拠隠しによる有罪という、この冤罪事件の本質を指摘し、裁判所に対しても、逆転有罪を許した過ちに判決の中で言及することを求めた。
判決は11月7日に言い渡されるが、この中で東京高裁が自らの誤審の検証に踏み込めるか否かに注目が集まる。
<文責 今井恭平>

2012年10月5日金曜日

布川事件の桜井さんがいよいよ11月12日に国賠訴訟を提起 支援する会も船出


昨年、晴れて再審無罪判決を勝ち取った布川事件の桜井昌司さんが国と県を相手取って起こす国家賠償請求訴訟を支援する会(名称は『冤罪・布川事件の国家賠償請求訴訟を支援する会』)が結成され、その結成総会が1日、東京都文京区の「文京区民センター」で開かれた。会には、全国各地から60人以上が参加。足利事件の菅家利和さんや氷見事件の柳原浩さんら著名冤罪被害者も激励に訪れ、盛況な船出となった。

 会はまず、かねてより国賠訴訟を提起することを表明していた桜井さんの挨拶で始まった。桜井さんは、「冤罪が次々明らかになるようになった今も警察や検察、裁判所は何も変わっていない。冤罪が作られる原因を取り除くには、国賠しかないと思った」と国や県を相手に訴訟を起こす意図を説明。「3年以内に勝つことを目標に全力で突っ走る。今も自分たちを犯人だと言い続ける検察に『申し訳なかった』と言わせたい」と決意表明した。

 その後にあった谷萩陽一弁護団長の説明では、この国賠訴訟の意義は、(1)桜井さんの救済、(2)冤罪を生んだ公務員一人ひとりの責任を明らかにすること、(3)冤罪を二度と生まない刑事司法の改革に結びつけること――の3点。検察による数多くの証拠隠しが指摘されてきたこの事件では、再審でも隠されたままだった無罪証拠が多数ある見込みのようで、それらが国賠訴訟の中でどれだけ明らかになるかが勝負の大きなポイントになりそうだ。

 弁護団は11月12日の13時に東京地裁に訴状を提出予定。支援する会も当日は東京地裁に駆けつけて宣伝活動を行う予定だ。

片岡健


 挨拶する桜井さん。左は、支援する会の中澤宏事務局長



国賠の意義などを説明する谷萩弁護団長



満員となった会場



応援に駆けつけた管家さん



応援に駆けつけた柳原さん



司会を務めた「無実のゴビンダさんを支える会」の客野美喜子事務局長