2012年1月25日水曜日

鈴木DNA鑑定は、再審開始を決定づける明白な証拠


7月23日に東京高裁に提出されたDNA鑑定書(鈴木廣一・大阪医大教授作成)によって何が明らかになったのか。なぜ、それはゴビンダさん無罪の決定的な証拠と言えるのか。

◆前提となる事実(一二審の判決構造)
それを理解するためには、まず東電OL殺人事件で何が争点となったのか、何が一審の無罪と控訴審の有罪という結論を分けたのかをあらためて確認しておくことが必要だ。
一審無罪判決の要点 

  • コンドームは事件当夜に投棄されたものとは言い切れない。
  • 被害者の死体付近に、被告人及び被害者以外の者の陰毛が2本落ちていた。
  • 第三者が101号室に人って本件犯行に及んだ疑いが払拭しきれない。
  • 巣鴨の定期入れ(ゴビンダさんに土地勘のない場所に被害者の遺留品があった)
  • 被害者による101号室独自使用の可能性を否定しきれない。


以上から、情況証拠はいずれも反対解釈の余地があり(有罪とも無罪とも言い切れない)「被告人を犯人とするには合理的疑いが残る」

控訴審逆転有罪の要点 

  1. 現場に遺留されたB型陰毛2本のうちの1本のミトコンドリアDNAが被告人と一致
  2. 現場のトイレに遺棄されたコンドーム内の精液のDNA型が被告人と一致
  3. このコンドーム内の精液は遺棄されてから10日と考えても押尾鑑定結果と矛盾しない
  4. 事件前の2月下旬~3月2日ころまでに被害者と101号室で買春したとの弁明は、被害者の手帳記載(きわめて正確)と照らして信用できない。
  5. S田の目撃証言は信用性が高い。
  6. 3月8日に被告人が101号室に行くことは時間的にも可能
  7. 他方、被告人の言うとおリに、本件犯行が行われる以前から、K荘101号室 の出入口の施錠がされないままになっていたとしても、右アパートに係わりのない被害者が、同室が空室であり、しかも施錠されていないと知って、売春客を連れ込み、あるいは、被告人以外の男性が被害者を右の部屋に連れ込むことは、およそ考え難い事態であること。


最も重要なのは7.であり、他は補完的証拠に過ぎない。

◆鈴木鑑定で判明した事実

被害者の膣内の残留精液(血液型O型)のDNA型は、被害者が最後に一緒にいた馴染み客A氏のものとは一致しない。この型をもつ人物は従来はまったく未知の第三者である。
101号室のカーペット上に残されていた陰毛のうち、1本のDNA型が、この未知の人物X氏のDNA型と一致した。
室内の他の2本の陰毛から、被害者とX氏のDNA型が混合した型が検出された。

ここから分かること
●被害者はゴビンダさんでもA氏でもない未知のXと、101号室内で関係をもった。
●すなわち、控訴審有罪判決の大前提である
「被告人以外の男性が被害者を右の部屋に連れ込むことは、およそ考え難い事態である」
が完全に(推測ではなく)物証によって否定された。
したがって、被告人に無罪を言い渡すべき証拠が新たに発見された場合に相当し、刑訴法435条⑥にいう再審開始事由が満たされたことになる。したがって刑訴法448条第1項にもとづき、東京高裁は再審を開始しなければならない。

註 被害者の血液型はO型、ゴビンダさんはB型。被害者と夜7時から10時ころまで一緒にいた客のA氏もO型。 (殺害時刻は深夜0時前後ころ)


<文責・今井恭平>